物も埃もためない、たまらない、魔法の家 [EBH]

EBH
EBH
水戸市郊外に新築した個人住宅です。
基本的にはオーナーのEさま(女性)がお一人で快適な生活を送ることを目的にデザインされた家です。

設計にあたってのEさまからのご要望は次のようなものでした。

とにかく掃除が楽な家であること
将来を考えバリアフリーであること
建物は2階建てだが生活は1階ですべて完結できること
外の気配を気にせずに生活できること

このEさまのリクエストのように明確な「ゴール」が示されると、建築家はなんとしてもお応えしなくては!という使命感に燃えます。
しかも、じつはEさまとエイプラス・デザインの佐藤は旧知の間柄。
これは奮起せずにはいられない状況です。

かくしてエイプラス・デザインでは佐藤を中心にして、これまでに培ったノウハウと技術の粋を集め、Eさまのご要望にお応えする計画づくりに着手したのでした。

1.とにかく掃除が楽な家であること 当サイトの「住まう人に聞く」のコーナーの中でEさまご自身がおっしゃっているように、東日本大震災によって家の中の物が壊れ散乱したことで、Eさまは精神的に滅入る期間が長く続き、そこから立ち直るために今回の建て替えを決断されたという経緯があります。
物を減らし、シンプルに暮らすことが今回の建て替えの大命題でしたので、この「掃除が楽であること」にはエイプラス・デザインでも徹底してこだわりました。

具体的には、まずどの部屋も「四角形」を原則として、複雑な形は避けることにしました(角が多いとそれだけ埃が溜まる箇所が増えることになります)。 また通常は取り付ける、窓の「額縁」やドア・引き戸の「枠」、壁の「巾木」や「廻り縁」などは、設置することで壁から数ミリの段差ができそこに埃がたまるので、思い切ってすべてなくしました。

(そのため、Eさま邸の扉はどれもドア枠がなく、床から天井までの高さがあります。 以前はこれをしようとすると特注になりましたが、最近ではこのタイプのものも入手しやすくなりました)

さらに、吊り戸棚や床下収納など普段は見えないところに物をしまうような収納も、物を溜める要因となるために一切取り付けることをやめました。

上記を徹底することで、掃除のしやすさはもちろんですが、意匠的にも空間の水平・垂直のラインが際立ち、どの部屋も実際より天井の高さや広がりを感じられる空間となりました。

2.将来を考えバリアフリーであること。 バリアフリーについては、玄関の段差を最小限に押さえ、廊下幅を通常より広く取って車椅子が通れるようにすることでご対応しました。また、2階はEさまご自身はほとんど使われることはないのですが、階段を使う場合も想定して、段の高さは低めに設定しました。

3.生活は1階ですべて完結できること。 2階は息子さんが使われるスペースと考え、Eさまの日常で必要な空間はすべて1階に集約しています。
加えて、お互いの生活時間帯が異なるときも生活音が気にならないよう、建物を次の3つのセクションに分けて構成しました。
①「2階建てセクション」=1階が洗面・お風呂などの水廻り・2階が息子さんのスペース
②「天井の高いセクション」=EさまのLDK
③「1階建てセクション」=Eさまの寝室
②のLDKが緩衝帯として機能するため、Eさまも息子さんも、互いに気兼ねすることなくそれぞれのペースで過ごすことが可能になります。

4.外の気配を気にせずに生活できること。 同じ敷地内にご自身の会社の駐車場があり人の出入りが激しいため、1階に開口はつくらないでほしいというのがEさまのご要望でした。
そのご要望にお応えしつつ、いかにして明るく快適な居住空間を創出するかがエイプラス・デザインに与えられた課題となりました。
とくにEさまが多くの時間を過ごすであろうLDKのすぐ外側に駐車場があるため、LDKの外部と接する面には開口がつくれません。

そのままでは真っ暗な空間となってしまうため、壁の上部、天井に近い場所に、横長の窓を等間隔にぐるっと配置することにしました。
これにより、周囲の視線は完全に遮断しつつ、十分な採光が確保でき、驚くほどに明るく開放感のある空間が出現しました。
窓は、リビングからキッチンにかけて少し高低差をつけて並べることで、空間にリズムを与える役目も担っています。
さらに、和室部分との境には天井に向けて間接照明を入れ、夜は、窓からの月明かりと間接照明を使って落ち着いた雰囲気を演出できるようにしています。

セキュリティ面にも考慮し、洗濯物を干すスペースも屋内に設けることにしました。
洗面・お風呂場に続くスペースを全面摺りガラスのサンルームのようにして、そこに洗濯物を干せるようにしたのです。
全面ガラス張りですから陽光のあふれるたいへん明るい空間ですが、摺りガラスのため外部からの視線はまったく気になりません。
このスペースも想像以上に快適なものとなりました。

各部屋の壁の色は基本は白色ですが、部屋の壁のひとつの面に色を採り入れると空間にとても表情が出るんですよとEさまにお話ししたところ、「ではピンクに!」というお答え。
スタッフで吟味し、柔らかで品のある薄桃色を選びました。
LDKに続く廊下の壁はその薄桃色と相性のよい、落ち着いた黄色にしています。
この2色の効果で、シンプルながらストイックすぎない、優しさを感じさせる空間が完成しました。

外部は、パラペット(小壁)を立ち上げて屋根を隠し、内部と同様に水平垂直のラインを引き立たせています。
外壁素材には、雨が降ると外壁に付着した汚れを洗い流してくれる機能を持った塗り壁素材を使用。ここでも「掃除が楽な家」であることを徹底しました。 外壁の色は白と黒の2色づかいに。
これは、Eさまのニックネーム「パンダ」にちなんだものです。

以上のようにすべてのご要望をクリアし、Eさまのこれからの人生を豊かに彩る住宅が完成しました。

心の底から喜びを表現されるEさまを前に、佐藤を始めスタッフ全員が建築家冥利に尽きる思いでした。
エイプラス・デザインの面目躍如となる“パンダハウス”の完成です。
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建設地 茨城県水戸市
構造 木造 2階建て
敷地面積
延床面積 168.43㎡
竣工 2015年4月
業務内容 新築設計監理
担当 佐藤昌樹 石橋拓也